竜宮絵巻

"「浦島太郎物語」ある日虐められている亀を助けた浦島太郎は、お礼にと海底の竜宮城へ連れられ、その壮大で美しい佇まいに目を見張った。乙姫が豪華な料理を振る舞い、鯛や平目が舞を披露して、至れり尽くせりの時間を過ごした太郎は、時を忘れてその暮らしを楽しんだ。時が経ち、ふと地上のことが気になった太郎は、乙姫に地上に戻りたいと打ち明けた。竜宮城を去る太郎に、乙姫はお土産にと玉手箱を手渡し、「決して開けてはいけない」と伝えた。久しぶりに地上に戻った太郎は、村がなくなり、家族や知り合いもいなくなったことに気を落とし、ふと手に持った玉手箱を開けると、中から立ち上った煙に包まれると、すっかり老人の姿になった。その後太郎は鶴となって末永く生きたという。”

約600年前の御伽草子「浦島太郎」をもとに、その世界観を焚火台に刻み込みました。竜宮城で過ごした数日間は現実世界では数十年という現代の映画でも用いられる設定を鎌倉時代に取り入れた先駆的SF作品です。太郎が住む現実世界、そして海底に広がる竜宮という幻想世界を行き来するこの物語を「竜宮」と「現世」の2つの意匠で表しました。何百年たっても色褪せない美しい物語を炎とともにお楽しみください。

『竜宮』

正面を飾るのは、乙姫を中心に据えた竜宮の華やかな幻想世界を葦手絵で表現した作品です。海底を魚が優雅に泳ぎ、先に見えるのは竜宮城。広大な海底世界を奥行き感じる構成です。乙姫の絵柄は「竜宮絵巻」という文字を封じ込めた葦手絵です。美しい絵巻物を観るような神秘的な世界観を繊細に表現しています。

大和へに 風吹き上げて 雲放れ
退きいりともよ 我を忘らすな

『現世』

背面を飾るのは、太郎が帰った地上世界を葦手絵で表現した作品です。煙を放つ玉手箱中心に、太郎を表す鶴を左、乙姫を表す亀を右に配置し、隔てられた2人の関係性を表現しています。印象的な伝統模様「青海波」は、正面の幻想世界と背面と地上世界をつなぎ、未来永劫の平穏という願いが込められています。

水の江の 浦嶋の子が 玉くしげ
開けずありせば またも会はましを